



「展覧会BEST5」でも書かせていただいた青崎伸孝さん。どの作品もこれまでの”常識”の感覚を揺さぶってくれるようなユニークな作品でしたが、とりわけ印象的だったのが「Value_Added #240950」という作品でした。 パッと見はボロボロの缶詰ですが、その缶詰を様々なスーパーで何度も”買い直し”するという作品ですが、バーコードで製品情報は管理されていてもその”個体”までは管理されていない、というシステムのスキをついていることにまず驚き、それから本来の商品価値は下がっていくのに、”その個体”にかけられた対価はどんどん膨れ上がっていくことや全く同じ個体なのに売られる場所によってその価値がころころと変わっていく…というのが、”工業製品”に対する価値観を揺さぶるような作品でした。


こちらも「展覧会BEST5」でも書かせていただいたChim↑Pomの作品。1階から4階までの床をスパッと抜いて、それぞれの空間の”日常”がサンドイッチになっているという、とても大掛かりで、なおかつ建物の”歴史”や”記憶”のようなものも閉じ込められた”重い”作品なのに「ビルバーガー」とめちゃくちゃに”軽くて”キャッチーなタイトル…というギャップのインパクトがものすごく強くて、一発でタイトルを覚えてしまう作品でした。(アーティスト名は覚えても、作品名は忘れてしまう事って結構多いんです…) ビルの4階から安全柵も注意書きもなく1階までスパッと床が抜かれているのは、仕事で求められる過剰な”安全性”や”おもてなし”の考え方と”自己責任”というものを考え直させられるようなものでした。また、このくり抜かれたビルの上のフロアでは何事もなく通常業務が行なわれているというのは滑稽に思えるけれど、もし自分の家や職場がそうなっていても実際は気づかないし、日常を送っている上で”見えていない部分”はいくらでもあるなぁ…という恐怖も感じる作品でした。




今年は大巻伸嗣さんの作品に触れられる機会が非常に多く、北千住では「くろい家」の展示(感想:移り変わる街なかで ゆったりと流れる時間を感じる ー大巻伸嗣「くろい家」@北千住)と「Memorial Rebirth」(感想:しゃぼん玉で風景が一変!「大巻伸嗣 Memorial Rebirth 千住 2016 青葉」。)のイベントがあったり、「あいちトリエンナーレ」では3点もの異なるタイプの作品を制作され、同時期に行われたアートフロントギャラリーでの個展では新しいシリーズが発表されたり、作品集が発売されたりもしました。 とりわけ印象的だったのは、あいちトリエンナーレの中での「Echoes Infinity -永遠と一瞬」です。白いフェルトの上に顔料で描かれた非常に繊細な作品ですが、会期後半にはその絵の上を歩けるようになるということで、とても儚い作品のように感じられもしましたが、一方で、その繊細な作品の細かい部分まで見ようと絵に近づけば絵がこわれていくし、自分が見たくて奥まで踏み入って行けばいくほど後から来た人はその風景が見られなくなる…と考えると、それはすごく強烈な体験でとても強い作品であるようにも思える作品でした。

(展覧会の感想:あいちトリエンナーレ2016に行ってきました 〜名古屋編〜)
その他にも、 まるでアーティストが作品をつくる時間をその場で共有できるような ■ 「旧展示室」/石田尚志

(海も、山も、芸術も!ぜんぶ楽しみたい茨城県北芸術祭 2016 ② ー山編ー) 水がスクリーンになるだけではなく、自分自身が冷たい水に浸かりながら作品を見るという体験が新鮮だった ■ 「人と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング - Infinity」/ teamLab



それでは、皆さま、よいお年を!
2016.12.31 PLAstica.